〈起元慶八年六月、尽十二月。〉左大臣従二位兼行左近衛大将臣藤原朝臣時平等奉勅撰

六月庚寅朔。日有蝕之。」正四位下源朝臣是忠帯剱。

二日辛卯。正四位下源朝臣是忠・无位源朝臣是貞・源朝臣国範･源朝臣諱・源朝臣香泉・源朝臣友貞・源朝臣遅子・源朝臣■子・源朝臣麗子・源朝臣奇子・従三位源朝臣忠子・従四位下源朝臣簡子・無位源朝臣崇子・源朝臣連子・源朝臣綏子・源朝臣礼子・源朝臣最子・源朝臣偕子・源朝臣黙子・源朝臣是子・源朝臣並子・源朝臣為子・源朝臣深子・源朝臣周子・源朝臣密子、並是天皇皇子廿九人、依去四月十三日勅書、賜姓隷左京一条、以近善為戸頭。無位源朝臣旧鑑・源朝臣是貞・源朝臣国紀・源朝臣諱・源朝臣香泉・源朝臣友貞・従四位下源朝臣簡子・無位源朝臣遅子・源朝臣麗子・源朝臣奇子・源朝臣■子・源朝臣崇子・源朝臣連子・源朝臣礼子・源朝臣綏子・源朝臣最子・源朝臣黙子・源朝臣是子・源朝臣並子・源朝臣謙子・源朝臣為子・源朝臣偕子・源朝臣深子・源朝臣周子・源朝臣密子、廿五人、預時服月俸。僧空性亦皇子、同預時服月俸。並頒下所司訖。

三日壬辰。雉入式部省。

四日癸巳。遠江国獲木連理一。

五日甲午。勅曰。天皇詔旨《良万止》先御命《乎》衆聞食宣《布》。太政大臣藤原朝臣、先御世御世《与利》天下《乎》済助《介》朝政《乎》総摂奉仕《礼利》。為国家建大義為社禝立忠謀《天》不意外《尓》万機之政《乎》朕身《尓》授任《天》存閑退之心、執高譲之節。朕聞、定策之勲、自古先録。亦賞不踰月。是政之先《止毛》聞食。大臣功績、既高《天》、古之伊霍《与利毛》乃祖淡海公・叔父美濃公《与利毛》益《左利》、朕将議其賞《尓》、大臣素懐謙■心必固辞退《天》政事若壅《世无加止》也也美思《保之天》、本官《乃》任《尓》、其職行《牟止》思《保之天》所司《尓》令勘《尓》師範訓導《乃美尓波》非《安利介利》。内外之政無所不統《久毛》有《倍加利計利》。仮使《尓》無所職《久》可有《久止毛》、朕耳目腹心《尓》所侍《奈礼波》、特分朕憂《止毛》思《保須乎》、「（『日本紀略』）自今日官庁《尓》坐《天》万政領行《比》、入輔」朕躬、出総百官《倍之》。応奏之事、応下之事、必先諮稟《与》。朕将垂拱而仰成《止》宣御命《乎》衆聞食《止》宣。

十日己亥。天皇御紫宸殿。神祇官大副従五位下大中臣朝臣有本昇殿、読御体御卜。左大臣正二位源朝臣融行事。其事具注別式。承和以後、此儀停絶。是日、尋旧式行之。」左大臣、自貞観十八年冬、杜門不出。今日始就太政官候庁、視事。

十一日庚子。月次神今食祭。天皇御神嘉殿、親供祀焉。

十七日丙午。太政大臣従一位藤原朝臣基経・左大臣正二位源朝臣融・右大臣従二位兼行左近衛大将源朝臣多・大納言正三位兼行右近衛大将太皇太后宮大夫陸奥出羽按察使藤原朝臣良世・大納言正三位兼行弾正尹藤原朝臣冬緒・正三位行中納言兼民部卿在原朝臣行平・中納言従三位兼行左衛門督源朝臣能有・参議刑部卿正四位下兼行近江守忠貞王・参議正四位下行右兵衛督兼伊豫権守源朝臣冷・参議正四位下行左兵衛督兼播磨権守源朝臣光・参議正四位下行右衛門督兼近江権守藤原朝臣諸葛・参議正四位下行左大弁兼播磨守藤原朝臣山陰・参議正四位下行皇太后宮大夫兼備中守藤原国經・参議正四位下行左近衛中将藤原朝臣有実・参議正四位下源朝臣是忠等奏言。謹検、令（舎）故諱新、礼経攸着。親尽造毀彜典斯存。由是言之、八月九日、田原天皇国忌。昭穆之義漸疎、崇親之理既遠。酌諸故実、宜従省除。謹録事情、伏聴天裁。奏可。

十九日戊申。勅。贈皇太后（沢子）、承和六年六月晦日崩。依太政官今月十七日論奏、省八月九日田原天皇国忌。以六月晦日、設国忌斎会於東大寺。頒下百官及五畿七道諸国訖。

廿日己酉。公卿執太政官曹司庁、任所国選擬郡司。策命如常。」以従四位下藤原朝臣佳美子、為女御。▼是日。遣弾正少弼従五位下安倍朝臣肱主・判官巡察弾正正六位上菅原朝臣宗岳・主典左衛門少志大初位下桜井田部連貞世等於大宰府、推殺害筑後守都朝臣御酉事。太政官下符大宰府稱。依彼府去六月六日解状、可早追捕射殺筑後守都朝臣御酉凶賊之状、七月十九日下知已了。而弦望屡遷、寂无音駅。論之急務、何其可然。今得大弐従四位上安倍朝臣貞行辞状稱。八月一日、捕獲賊類。須加覆掬、具以言上。而所有監典等、或奉使未帰、或随例多事。望請。被遣朝使、勘究罪人者。凡凶党為害、国家所憂。禍数発於匪図、情何拘其常理。而寄事繁劇、遅留不断、外朝之謂、豈容如此乎。夫有非常之変、当施一切之議、仍特遣件等人、発■其事。府宜承知、聴使処分。

廿三日壬子。遣式部大丞正六位上坂上大宿祢茂樹・勘解由主典従七位下凡直康躬等於石見国、推訴訟事。下知彼国司稱。介外従五位下忍海山下連氏則等、去月六月六日解稱。管迩摩郡大領外従八位上伊福部直安道、率部内百姓、来囲権守従五位下下毛野朝臣氏永、為政乖法、仍奪取印匙。以授傍吏、守氏永以剱撃傷氏則妻下野屎子者。又守氏永、同月十五日奏上稱。傍吏発賊兵、擬殺氏永、即令凶賊奪取印匙鈴等、以杖撃氏永、打杭地上、張着手足、■鎖）篭倉裏者。今如奏解状、事緒各異、実状不同。非遣朝使、何決■渭。仍為推問其由、差遣茂樹等。国宜承知、聴使処分。」勅、以近江国米百五十六斛・丹波国米三百七十九斛・貞観銭十二貫文、充嘉祥寺造五重塔料。」夜偸児入民部廩院倉、盗取米一斛五斗。為行夜者所捕得。偸児引刀自刺不死。遣検非違使、送入於獄。（仁和元年六月廿日癸酉条に同文あり）

廿九日戊午晦。地震。」（『日本紀略』）大祓於朱雀門前。

秋七月己未朔。二日庚申。天皇御紫宸殿、視事。親王公卿侍焉。

三日辛酉。上総国言。木連理。

四日壬戌。広瀬龍田祭。

五日癸亥。推筑後国殺害使弾正少弼従五位下安倍朝臣肱主奏言。獄令云。犯罪皆於事発処、官司推断。又条云。犯罪笞罪群決之。杖罪以上、群断定送国。覆審訖、徒杖罪及流、応決杖。若応贖者、即決配徴。諸国断流以上、若除免官当者、皆連写案、申太政官。然則、推断之法、皆於犯処。而大宰府解稱。大監平高平等、連繋罪人、向府訖者。高平等不請処分、輙捕送府、府司不責其由、輙受拷問。今使等欲向事発処、罪人在府、執罪人居、可乖法意。欲率罪人、向事発国、府司且経勘問、略知端緒。使等在彼、訊鞫之日、事有失語、可喚府司。加之、罪人数多、率将有煩。望請。於府推問、使還之日、依法責返抄、并印署日記、一准諸国之例。右大臣（源多）宣。奉勅依請下知。

六日甲子。太政大臣抗表稱。臣伏奉去月五日詔命、欣戴啓処无聊。臣貪見聖化、思■■愚。況蒙綸言、翊袞職。誠以区区於待旦、以吁尭心（叶尭典）、汲汲於戴星、無負湯誥。而天資■弱、病累稍仍。受仮而出、既■数旬。扶病而興、未朝一日。雖励離踈之質、難堪吉甫之勤。匪啻微臣坐貽罪辜、還恐庶績或成壅遏。方今、左右大臣、朝之柱石、国之葭■。舜既任其■龍、周能得其魯衛。画一之寄、将更待誰。伏望。枉降天鑑、許臣微懐養生衡宇之中、久戴尭舜之化。謹奉表以聞。

八日丙寅。勅。太政大臣、省表具之。公義為股肱、親是朕之傍頼。伊自疇初、密於漆之投膠、深於魚之憑水。豈啻古今名臣之分而已哉、一日不見如三秋。故望其日日入朝、一事不相詢如蒙霧。故命其事事諮稟、欲今天知朕之於公、无一日不相見、无一事不相詢也。是復所以為当時之重鎮、為後嗣之元亀者也。必王室之政、無所不知、有司之事無所不統。足以分朕■食宵衣之憂、慰朕霊懐側席之望。如何、責阿衡、以忍労力疾、役冢宰以侵暑冒寒乎。公其頤養精神、臥治職務、亦加将摂、無替釐益。国家昇平、所望於公、聴政久視、亦所望於公。公其悉之。

十一日己巳。天皇御紫宸殿、視事。賜親王公卿飲宴。左右近衛逓奏音楽。宴楽享日、極歓方罷。賜衣被次侍従已上、預見参賜禄者八九人。

十五日癸酉。授武蔵国正五位下勲六等畦切神従四位下。従五位上小野神正五位上。上総国正四位下勲五等玉崎神正四位上。正五位下勲五等姉前神・飯富神、並正五位上。正六位上建市神・田原神、並従五位下。

十九日丁丑。雷雨。諸衛陣、於階下。

廿七日乙丑。雷雨。震焼山背国愛宕郡委穀倉一宇。

廿九日丁亥。天皇御紫宸殿、観覧相撲。不改閤門、親王公卿侍殿上、侍従侍宜陽殿西廂。相撲既訖、左右近衛奏音楽。

卅日戊子。天皇御紫宸殿、覧相撲。

八月己丑朔。辰時、天西有声、如雷一度。」天皇御紫宸殿視事。太政大臣已下参議已上侍焉。

四日壬辰。自戌至子、小星四方流散。殞墜如雨。」勅、令上総国、括逐境内浪人。先是、彼国司言。斉衡二年六月廿五日格稱。太政官去延暦十六年四月廿九日、下大宰府符稱。括責浮宕、先已下知。今聞、秩満解任之人、王臣子孫之輩、結党群居、同悪相済、侫媚官人、威陵百姓、妨農奪業、為蠹良深。宜厳検括、勤還本郷。情願留住、便即編附、去留之事、夏月令畢、附大帳使、別状申上。若犯者、不論蔭贖、科違勅罪、移配遠処。土人容而不申官、国司知而不糺者、又与同罪。宜重告知、厳令検括者。今国□□□□□□半、而前司子弟、不順国政、富豪浪人、乖吏所行。至于勘納官物、対捍国宰、陵寃郡司。租税多逋、調庸闕貢、職此之由。望請。准彼格放逐。但情願留住、従国務者、量状貫付土戸。従之。

五日癸巳。自日没至人定、流星「（『日本紀略』）東西南北分散、行殞如雨。自人定至夜分、或出入紫微宮、」或出入北斗貫索。陵内外宿、其数「（『日本紀略』）不可勝計。」

六日甲午。天皇御仁寿殿、覧弄玉童於庭。左近衛府奏音声。

十三日辛丑。伊勢斎内親王、臨鴨水、修禊事。即便入初斎院、於雅楽寮。公卿陪従、所司供奉、如常儀。

十五日癸卯。天皇御紫宸殿、閲覧信濃国貢馬。

十六日甲辰。分遣大中臣氏人等、左右京五畿内七道諸国解除。以十一月、可修大嘗会也。

十九日丁未。釈奠如常。従五位下行助教浄野朝臣宮雄発礼記題。文章生学生等賦詩。讌礼未竟、雷霆発声。公卿遽参内内裡。去九日丁卯、可行此礼。而六日負氷牝馬、於主水司傷胎。馬主隠蔵、不令人知。司以其氷、供奉御膳。後遂発顕。故延而行之。「（仁和元年八月十五日丁卯是日条の重出）伊勢斎内親王、将修禊事。而典薬大属蜂田岑範、去十一日夜於寮中頓死、邪穢延染供奉諸司。仍停止。

廿日戊申。天皇御紫宸殿、喚明経博士等於御前、命論五経義、如旧儀。賜禄有差。

廿六日甲寅。「令尾張国愛知郡、以定額願興寺、為国分金光明寺。縁本金光明寺災火焼損也。（『日本紀略』）」新造神琴二面、奉充春日神社。以神護景雲二年十一月「九日所充破損也。（『日本紀略』）」

「十七日乙卯。（『日本紀略』）」参議刑部卿正四位上兼行近江守忠貞王卒。忠貞王者、二品賀陽親王之子也。〈云々〉。年六十五。

廿八日丙辰。以山城国正税稲千三百八十七束、充造左京北辺溝橋料。」出雲国正税八万束・長門国三万束、各班給部内百姓。以去年不登、民無宿儲、苗種不下、農業可廃也。」出羽国百姓□□□□□□□□□□課并不課一千九百四十九人、下符民部省、除弃大帳。

廿九日丁巳晦。以平朝臣等子為女御。」「於朱雀門前大祓。以可修大嘗会也。（『日本紀略』）」

九月戊午朔。天皇御紫宸殿視事。「（十一月戊午朔の一部重出。）中務省率陰陽寮、就内侍、奏進御暦。」親王公卿並侍。」遠江国浜名橋長五十六丈・広一丈二尺・高一丈六尺。貞観四年修造、歴廿余年、既以破壊。勅、給彼国正税稲一万二千六百四十束改作焉。

二日己未。信濃国言。獲木連理二。

三日庚申。定御斎焼灯。▼「是日。寅時有（『日本紀略』）」大流星。長一丈許。自南東行西北。遂殞於地。其響如雷。

五日壬戌。大隅守従五位下時統宿祢当世修解申請稱。大隅・薩摩・日向・壱岐・対馬等国嶋、四度公文、進大宰府、国嶋雑掌、不更向京。而此国自天長元年以降六十一年、未請税帳返抄。就中、自天長元年迄貞観十五年、合五十年、正税返却帳所徴、勘出穀穎二百五十一万二千六百九十束、自貞観十六年迄当年、一十一年、公文未勘、亦其帳未進。然則、勘出之穀、未知幾許。望請。准六国、雑掌勘弁彼帳。太政官処分。依請、即下知大宰府。

九日丙寅。重陽之節。天皇御紫宸殿、賜宴群臣、喚文人賦詩。内教坊奏女楽。宴享賜禄各有差。」太政官処分。越前国気比神宮封租穀、勘納神庫、充祭祀費、国宰宮司、相知出納。又停国司充神封戸百姓、於他役焉。

十日丁卯。権僧正法印大和尚位遍照奏言。雲林院者、故無品常康親王之旧居也。親王出家為沙門、貞観十一年二月十六日、以此院付嘱遍照曰。深草天皇（仁明）登遐、常康落髪。昊天罔極、徳猶難報。思欲永為精舎、令学天台之教。伏思。元慶寺永置年分度僧三人、伝天台之法、行試度之道。請以為元慶寺別院、成親王之心願矣。但院中雑事、択遍照門徒之中、堪幹事者、令其勾当。勅。依請聴之。

十一日戊辰。天皇御朝堂院小安殿、遣従四位上行神祇伯棟貞王・大副従五位上大中臣朝臣有本等、奉伊勢大神宮幣。

十四日辛未。勅、以新銭卅三貫、相分給左右京職出挙、以其子銭送大学寮、充学生菜料。先是、大学頭従五位上兼守右少弁藤原朝臣佐世奏言。「（『類聚国史』）拠式、左右京職出挙、以其息利、送大学寮、充学生菜料。弘仁之前、毎年有送、天長以降、絶而不納。其隆平永宝者、延暦十五年新貨也。厥後、銭文改易、惣経五度。両職須毎改旧慣、請換新銭。而惣略其事、全失本物、遂使生徒、積歎無菜。今尋物意、給諸司公廨銭者、修理官舎也。全猶新泉初湧、十倍本源。況大学者、百川之学海、九流之道淵也。大厦棟梁、於是乗育、巨川舟■、於是可採。論其弘益、豈校官舎。以彼比此、相去既遠。望請。准拠式文、充給新銭、毎年出挙、依例令送。若致未進、将拘職司考禄。詔従之。」

十六日癸酉。令近江丹波両国各造高瀬舟二艘（六艘か。又三種か。）。其二艘、長三丈広五尺。二艘長二丈一尺広五尺。二艘長二丈広三尺。送神泉苑。

十七日甲戌。勅、元慶寺置伝法阿闍梨。伝灯大法師位惟首・伝灯大法師位安然、令教授真言業年分度者。先是、権僧正法印大和尚位遍照奏言。依太政官去元慶元年十二月九日下牒、毘盧舎那・金剛頂、摩訶止観等業各一人、毎年十二月十六日試度之。夫以、顕教宗者、不簡授業之師、至真言教者、未潅頂者、不能読一句、除非阿闍梨、不聴輙伝授。所謂毘盧舎那・金剛頂等経、尤是真言之秘蔵、密教之本根也。不置伝教阿闍梨、誰能伝此教。僧惟首安然等、智行兼資、精進無倦、堅持利物之誓、漸積伝灯之功。年来執遍照之辺、稟学胎蔵金剛両部大法既訖。今夏臘是高、器堪師範。望請。准延暦寺例、授伝法阿闍梨位、「阿闍梨位」敷演秘教、試練学徒。従之。

十八日己亥。申時雷電雨雹。摧傷草木之葉。占曰。凡雹者、冬之過陽夏之伏隠也。過夏冬温伏隠夏寒矣。

廿日丁丑。恒貞親王薨。不任葬司。以喪家不経奏聞、殯斂既訖也。帝不見事三日。親王者、淳和太上天皇之第二子也。母太皇太后諱正子、嵯峨太上天皇之女焉。親王、性寛雅、美風姿。「（『日本紀略』）天長十二年春、皇帝御淳和院、譲位仁明天皇、立親王為皇太子。承和五年、皇太子年十二、冬十一月、於紫宸殿加元服。天顔咫尺、麗容厳備、降殿拝舞、挙止閑麗。九年七月十五日、嵯峨太上天皇崩。十七日、弾正尹阿保親王、奉書嵯峨太后、封緘曰。春宮坊帯刀舎人伴健峯有謀叛事。同廿三日、廃皇太子於淳和院。嘉祥二年正月、授三品。頃之、出家為沙門、名曰恒寂。崇信仏道、精進持戒、経歴歳時、絶而无虧。沐浴静坐、无病而薨。（『扶桑略記』参照）」年六十。遺命薄葬、務従率倹。嘗太子未廃之前、有玉児引裾坊牛車善辛苣之謡。太子駕牛車、出禁中。童謡有験、果而然矣。（『続日本後紀』承和九年八月甲戌条参照。）

廿一日戊寅。授相模国従四位上寒河神正四位下。淡路国従五位下湊口神・久度神、並従五位上。

廿五日壬午。伊勢国司言。朝明郡生連理樹一。

廿九日丙戌。任官。（『日本紀略』）」出羽国司言。今年六月廿六日、秋田城雷雨冥晦。雨石鏃廿三枚。七月二日、飽海郡海浜、雨石類鏃。其鋒皆向南。陰陽寮占云。彼国之憂、応在兵賊疾疫。」先是、国忌斎会布施、依式充用官家功徳分封物。是日、勅。自今以後、停用彼封物、以官庫物充之。

冬十月戊子朔。天皇御紫宸殿、賜宴群臣。左右近衛府逓奏音楽。勅、令参議右衛門督藤原朝臣諸葛、前伊勢守藤原朝臣諸藤兄弟、弾琴為歌。日晩、賜禄各有差。

二日己丑。任大嘗会御禊裝束并前後次第司。参議正四位下行左大弁兼播磨守藤原朝臣山陰、為装束司長官。右中弁正五位下安倍朝臣清行、為次官。判官二人、主典二人。正三位行中納言兼民部卿在原朝臣行平、為前次第司長官。従五位上行式部少輔兼文章博士加賀権守菅原朝臣道真、為次官。判官・主典各二人。中納言従三位兼行左衛門督源朝臣能有、為後次第司長官。従五位上行兵部少輔源朝臣遠、為次官。判官・主典各二人。」下知出羽国、勤慎警固。以雨鏃見之恠、兵疫示凶也。

三日庚寅。令近江・越前両国、禁遏諸司諸家諸衛府使、強雇往還人馬。

四日辛卯。授土左国正六位上堰留神、石留神、並従五位下

八日乙未天皇御紫宸殿左近衛、兵衛等衛門等府献物。去五月六日競走馬之輸物也。親王公卿並侍。左近衛府奏音楽。宴飲畢景、賜禄有差。▼是日。有勅、太政大臣禄法、雑俸依式行之。先是、太政大臣表請減省。准左右大臣、今復旧数焉。「（竄入か）位禄、文武天皇慶雲二年十一月庚辰、有詔、加親王臣食封各有差。是五位有食封、至是代位禄也。」

廿二日己酉。差定大嘗会御禊陪従親王已下五位已上八十四人。令諸司給朝服。「■」

廿八日乙卯。行幸鴨河、大修禊事。天皇践祚之年十一月、修大嘗会祭。先一月、備法駕、建旗鼓、行臨水盥禊之例也。是日、聴京城万民会集縦視。山城国献物。親王已下五位已上、賜禄有差。日暮、鸞輿還宮。

十一月戊午朔。天皇御紫宸殿視事。中務省率陰陽寮、就内侍、奏進御暦。

三日庚申。平野春日祭。（『日本紀略』）

四日辛丑。梅宮祭。（『日本紀略』）

五日壬戌。甲斐国言。嘉禾生管山梨郡石禾郷正六位上清原真人当仁宅。其一、十三茎五十穂、其一、十二茎四十三穂。当仁、是従四位上豊前王之子也。

六日癸亥。夜地震。

十日丁卯。建散位従四位下良末王、奉幣於伊勢大神宮、告以可修大嘗会。天皇御朝堂院小安殿発焉。」「（九月十一日戊辰条の重出。）戊辰。天皇御朝堂院小安殿、遣従四位上行神祇伯棟貞王・大副従五位上大中臣朝臣有本等、奉伊勢大神宮幣。」

十七日甲戌。授伊豫国正六位上井河神従五位下。

十九日丙子。大原野祭。

廿日丁丑。園韓神祭。

廿一日戊寅。鎮魂祭如常。

廿二日己卯。天皇御朝堂院、親奉大嘗祭。先御悠紀殿、後御主基殿。親王公卿、文武百寮、小斎大斎、宿侍如式。

廿三日庚辰。未鶏鳴、大嘗宮祭礼既訖。天皇幸豊楽殿。巳時、御悠紀帳、賜宴群臣、悠紀国献物。未時、移御主基帳。群臣移執主基座。主基国奏風俗歌舞。日暮、以悠紀国献物衣被、賜親王已下五位已上。諸有雑怠及内外文武官未得解由者、皆預焉。是夜、天皇留豊楽殿後房。文武百官侍宿。親王已下参議已上、侍御在所。琴歌神宴、徹夜歓楽、賜御被。

廿四日辛巳。巳時、天皇御悠紀帳、賜宴群臣、主基国献物。未時、移御主基帳、群臣移座。及主基国奏風俗歌舞、賜主基国所献衣被、一如昨日儀。是夜、天皇留御、王公以下百官、侍宿亦如昨。

廿五日壬午。鉄撤去悠紀主基両帳。天皇御豊楽殿広廂、宴百官。多氏奏田舞。伴佐伯宿祢両氏奏久米舞。安部氏吉志舞。内舎人倭舞。入夜、宮人五節舞、並如旧儀。宴享賜絹綿有差。各有差。諸司官人五位已上、有雑怠、及諸国司就事入京、并新除外吏過裝束程未向任之輩。皆預之。但未得解由者、不在預限。宣詔曰。天皇《我》大命《良万止》勅大命《乎》諸衆聞食《止》宣。今日《波》大嘗会《乃》直相《乃》豊楽畢日《仁》在。故是以、黒《支》白《支乃》御酒赤丹穂《尓》食《恵良支》罷《止》為《天奈毛》、常《毛》賜酒《乃》幣《乃》御物賜《久止》宣。」授無位直実王従四位下。「（『類聚国史』）従四位上行左近衛権中将兼備前守源朝臣興基正四位下。従四位下行丹波権守源朝臣興範・伊勢守藤原朝臣興世、無位源朝臣旧鑑・源朝臣是貞、並従四位上。右近衛少将正五位下平朝臣正範・左少弁藤原朝臣有蔭、並従四位下。上野介従五位上安倍朝臣興行・備前権守源朝臣加・神祇大副大中臣朝臣有本・備前介源朝臣淵・伊勢権守藤原朝臣有文・右衛門権佐兼備前権介藤原朝臣有穂・勘解由次官兼伊勢権介惟良宿祢高尚等、並正五位下。大宰少弐従五位下御室朝臣安常・備中権介源朝臣進・伊勢介南淵朝臣興世・伊豫介善淵朝臣愛成・伊勢権大掾笠朝臣秋用・散位藤原朝臣貞幹等、並従五位上。外従五位下行采女正時原宿祢春風・助教中原宿祢月雄、无位源朝臣令行・源朝臣来・、大内記正六位上小野朝臣千里・式部大丞高階眞人茂範・散位藤原朝臣恒泉・伊勢少掾当麻真人春興・備前権掾藤原朝臣元佐・備前掾藤原朝臣世武・伊勢大掾文室朝臣正真・左近衛将監紀朝臣益国・右兵衛大尉巨勢朝臣御津、備前権掾従六位上藤原朝臣秀高・大膳亮藤原朝臣秀行・右近衛将監兼備前権掾山口朝臣連松・少判事橘朝臣時生・、大舎人助正六位上実雄王・主水正忠臣王・皇太后宮少進藤原朝臣常淵・式部大丞坂上大宿祢茂樹・散位八多朝臣清直・大外記島田朝臣惟上・右衛門大尉多治真人安方等、並従五位下。左大史正六位上兼行算博士家原朝臣高郷外従五位下。」夜鸞輿還宮。」授右近衛将監正六位上源朝臣忠相・左衛門大尉平朝臣有広、並従五位下。

廿七日甲申。女叙位〈男二人、女十五人。〉「（『類聚国史』）授右近衛将監正六位上源朝臣忠相・左衛門大尉平朝臣有広、並従五位下。

十二月丁亥朔。日有蝕之。

二日戊子。勅、遣左衛門佐従五位上藤原朝臣高經・六位六人・近衛一人・鶏七聯・、犬九牙於播磨国、中務少輔従五位下在原朝臣弘景・六位四人・近衛一人・鷹五聯・犬六牙於美作国、并猟取野禽。▲鶏七聯、■七聯（『類聚国史』）

五日辛卯。以右大弁従四位上兼行勘解由長官橘朝臣広相、為参議。

十一日丁酉。於神祇官、修月次神今食祭。内裡犬産故也。天皇不御神嘉殿、公卿行事。

十六日壬辰。授肥前国正四位下田嶋神正四位上。従五位下金立神従五位上。甲斐国正六位上船形神従五位下。▼「是日。（『日本紀略』）」定贈皇太后山城国愛宕郡中尾山陵四至之堺。東限谷、南田、西隍、北谷。有山四町五段。下知中務治部両省・施薬院・山城国。

十七日癸卯。太政大臣献物。奏音楽。親王公卿並侍。自晨至夕、歓宴乃罷。

十九日乙巳。於仁寿殿、始修仏名懺悔。限以三日。

廿日丙午。定毎年献荷前幣十陵五墓。近江宮御宇天皇山階山陵在山城国宇治郡。平城宮御宇天皇後田原山陵在大和国（光仁）。桓武天皇山陵在山城国紀伊郡。贈太皇太后藤原氏（乙牟漏）長岡山陵在山城国乙訓郡。祟道天皇八嶋山陵在大和国添上郡。平城太上天皇楊梅山陵在大和国添上郡。仁明天皇深草山陵在山城国紀伊郡。文徳天皇田邑山陵在山城国葛野郡。太皇太后藤原氏（明子）後山階山陵在山城国宇治郡。贈皇太后藤原氏（沢子）鳥部山陵在山城国愛宕郡。贈太政大臣正一位藤原朝臣（不比等）多武岑墓在大和国十市郡。贈太政大臣正一位藤原朝臣（長良）墓在山城国宇治郡。贈正一位藤原氏（長良の妻）墓在山城国紀伊郡。贈太政大臣正一位藤原朝臣（総嗣）墓在山城国愛宕郡。贈正一位藤原氏（総嗣の妻数子）墓在山城国同郡。停廃田原天皇山陵・太皇太后考太政大臣正一位藤原朝臣（良房）、妣贈正一位源氏（潔姫）両墓、不預別貢荷前幣。

廿一日丁未。授摂津国正六位上三嶋神従五位下。

廿五日辛亥。勅、以山城国愛宕郡鳥部郷地四町、為贈正一位藤原朝臣総嗣墓地。以同郡八坂郷地十町、贈正一位藤原朝臣数子墓地。

廿七日壬子。前遠江守従五位上藤原朝臣清保言。清保在任之日、乗穀穎四十二万一千三百七十六束、積在諸郡。請令新司付帳。太政官下符、令注載税帳。

廿八日甲寅。天皇御建礼門、分遣公卿已下次侍従已上於諸山陵墓、献荷前幣如旧儀。

卅日丙辰。朱雀門前大祓。公卿行事。」夜、天皇御紫宸殿、追儺如旧儀。